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20 8月, 2017

遠藤克彦建築研究所 大阪オフィス訪問×「大阪新美術館」進捗レポート

遠藤克彦建築研究所 大阪オフィスを訪問してきました。大阪市営地下鉄 四つ橋線 肥後橋駅から徒歩5分程。


1〜2階が吹き抜けの駐車場の小さな雑居ビル。3階に観葉植物が見えるのがオフィスだ。


ご存じの方も多いかと思うが遠藤さんは「大阪新美術館」の設計をコンペにより2017年2月に勝ち取った。東京品川にオフィスを構えているが、この仕事のためにスタッフの殆どと共に大阪に移り住み、大阪オフィスを立ち上げた。関東の業務や、他の業務の多くもここ大阪で進行させている。


大阪新美術館計画地(Googleマップより)。中之島の一番幅が広くなる辺りで、東(左)に関西電力本店ビル、南(上)に国立国際美術館、大阪市立科学館、西(右)は空地で大学の校舎が建つ予定。

関電ビル公開空地側から。右に見えている植栽の上に途切れたブリッジがあるが、美術館を造る造らないなどと検討している頃から、いつか接続できるようにと待ち構えている。このブリッジはコンペの要項にも記されていたそうだ。

西側は不測だが、各方向に大阪の異なる風景を切り取ることができる大開口。その大開口が光のトンネル(パサージュ)のように街の新しい風景をつくり出す。光のトンネルを強調するには外壁を白か黒にしたいが、街のなかにあって埋没しないように黒を選択し、新しいアイコンのような存在を目指す。内部はパサージュ空間を中心としながら空間体験を重ねながら巡れるようにする。
外壁の素材はオフィスで見せてもらったが、様々な素材と様々な黒を検討中だ。
構造は佐藤淳、照明はシリウス、ランドスケープはスタジオテラが担当している。


もうじき基本設計を完了させるスケジュールのため検討は大詰め。最新模型の詳細は今は公開できない。


美術館業務と、通常業務、新しいコンペと「ちょっと忙しすぎるな、、、(笑)。でも徹夜はさせない。早く帰って早く出社してもらっている、はず。」とフロアを見返す遠藤さん。


各地から手伝いに来てくれるインターン含め10数人が働くが、まだまだ人手が欲しいそうなので、社員、アルバイト、インターン共に募集中だそうだ。


軽井沢で計画中の別荘。尾根に建ち三方に傾斜する敷地。


大阪から軽井沢へは東京周りになるそうだ。


遠藤克彦さん。「このところ週1〜2が東京、すっかりメインは大阪。一番気をつけているのは体調管理です。」「延床20,000m2以上ある上、美術館は通常のビルの常識が通用せず、当たり前にできるはずのことがNGだったり、設備が異常に多いなど検討事項は無限とも思えるほどありますが、きっと素晴らしい建築にしますので期待していて下さい。」
竣工は2021年、4年半後の予定。

【大阪新美術館の公募型設計競技について】


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09 8月, 2017

廣部剛司による中野区の住宅「奏楽庵(sogaku-an)」

廣部剛司建築研究所による東京都中野区の住宅「奏楽庵(sogaku-an)」を見学してきました。


敷地面積116m2、建築面積63m2、延床面積119m2。木造2階建て。


ダークグレーの外観は、下の四角いボリュームに、半分に割られた上の切妻ボリュームが噛み合わさったようなかたち。


玄関を抜け戸を開けると音楽ホールが現れた。
リビングダイニングでもあるこの主室は、バイオリンの練習や、サロンコンサートにも対応できるよう設計されている。「森の中で音楽を奏でるような」という施主の希望に応えられるよう、木々を植えられる中庭を計画した。


小上がりのダイニングスペースはコンサート時の客席としても使いやすい。左奥がキッチンで、右の引戸から水回りへ、さらに右は階段室。中庭、水回り、階段室は防音のためのバッファーゾーンとしてもはたらく。


柱や壁のない空間を得るため、大きな梁が掛けられている。梁を避けつつ反響音をコントロールするため凹凸の天井となっている。
左側で演奏、その前がソファ席、小上がりの上が椅子席になる、サロンコンサートの様子が想像できる。


スポットや間接照明が設えられ、様々なシーンを演出できる。


中庭の壁は防音の観点からも高めにした。植栽は今後施主が行っていくそうだ。


2階へ上がるとすぐにスタディスペースで、5m程もある長机が作り付けられる。その上にはロフトが見る。


スタディースペースを回り込むと個室が並ぶ。子供室二つと、奥に夫妻それぞれの寝室二つと、ウォークインクロゼットがレイアウトされる。


2階では現しになっている大梁。そして子供室の間にはロフトへ上がるハシゴ。


子供室。外に直接面した開口はないが、中庭からの光がポリカーボネートの引戸を介して注ぎ込む。
ベニヤの半端寸法を中央に寄せ、意匠化している。


それぞれの個室はコンパクトにしたが、その分個室の接続部にはちょっとした溜まりを設けた。スタディーコーナーと合わせ家族の共用部を充実させたのだ。


ロフトへのハシゴはもう一つ。


上がってみると小屋裏全体を見渡せる。2面のロフトは合わせて8帖以上ある。ロフト部以外も水平垂直方向に連続した空間のため、ほぼ3階に見える。子どもにとっては格好の遊び場だろう。


面積的な大きさだけでは測れない抜けを感じられる。


「壁と天井は、響きとコストを考慮して基本的にシナベニヤを採用しています。1階2階共にそれを丁寧に割付けしていくことで、空間ボリュームや映し込まれる陰翳がより『素』の状態で感じられるのではないかと考えました。」と廣部剛司さん。

【奏楽庵(sogaku-an)】
設計:廣部剛司建築研究所
構造:構造設計舎
施工:平野建設(ASJ)

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01 8月, 2017

「ユメイエ展:日本の若手建築家」と「A&A展」レポート

7月28日よりTARO NASUで開催が始まった「ユメイエ」展に行ってきました。本展は、ウェブコンテンツ企画のために千葉学が選んだ日本の若手建築家11組による「夢の家」をテーマに制作したドローイングと、新たに制作した模型で紹介するというもの。主催は石川文化振興財団。

参加建築家
青木弘司、畝森泰行、大西麻貴+百田有希、海法圭、田根剛、金野千恵+アリソン理恵、中川エリカ、能作淳平、能作文徳、萬代基介、御手洗龍


建築家の選定は、これまでの実作だけではなく、講評会やシンポジウムなどでの発言も重視され、"日常のなかに新しい価値を見いだせる人たち" が選ばれた。

もし何の条件も制限もなかったらどんな家を考えるのか?「夢」という概念の自由な解釈もみどころだ。

会場構成は中川エリカ。
2列に配した模型群。そのまわりをぐるりと囲むようにドローイングが展示されている。


〈変なエコハウス〉能作文徳


〈まちの標本〉能作淳平
箱を持ち上げて観賞するという体験型模型。 


そしてそのドローイング〈シェア別荘〉


〈自然と共に生きる家〉萬代基介


そしてドローイング。
洞窟の中の寝室、川沿いの食堂、森の中の書斎、牧場の作業小屋、湖畔の展望台、草原の台所など、道を歩くような軽やかな家。


〈ゆっくりと変わる家〉畝森泰行


〈まちを動かしていく家〉御手洗龍


〈家は夢みる〉田根剛


そしてドローイング〈夢は家〉


〈四季の家ームシム・ラム〉teco(金野千恵+アリソン理恵)


〈雲のみちをなぞる〉海法圭


〈家は生きる歓びを呼ぶ〉中川エリカ


そしてドローイング。


〈伊達の家〉青木弘司
"自分の想像力だけで考えられ得る家は、決して夢の家などではない" という思いから、唯一実際のプロジェクトを出展。


〈建築のような、生き物のような〉大西麻貴+百田有希/o + h


その他紹介しきれない個性的なドローイングはぜひ会場でご覧下さい。


建築家の作品について理解を深めることができる資料・映像コーナーも用意されている。


オープニングパーティーには、多くの建築家、関係者が集まった。


さらに同じビルに入っている現代アートギャラリーtaïmatzでは、「A&A」展が開催中だ。


「A&A」は、世界的に活躍する現代アーティストとアーキテクトが組み、岡山市内の歴史文化ゾーンおよびその周辺で敷地を選び、空間をつくり、宿泊施設としてオープンさせるという、公益財団法人 石川文化振興財団の事業・プロジェクトである。
アート作品として体験してもらうために、宿泊施設は一軒家サイズ、1日1組の宿泊を想定。第1弾は2019年の完成を予定している。約20年かけて少しずつ完成させていく計画だ。

参加アーティストと建築家は5組。本展ではドローイングやコンセプトなど、プロジェクトの構想が展示されている。


1. フィリップ・パレーノ× 青木淳建築計画事務所


2. リクリット・ティラヴァーニャ × アトリエ・ワン


3. リアム・ギリック × MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO


4. ピエール・ユイグ × New-Territories

5. ジョナサン・モンク × 長谷川豪


【ユメイエ展:日本の若手建築家】
会期:2017年7月28日~8月12日
会場:TARO NASU
詳細:www.taronasugallery.com
※8月12日には出展建築家が登壇する関連シンポジウムが開催される。

【A&A展】
会期:2017年7月28日~8月12日
会場:taïmatz
詳細:http://taimatz.main.jp/


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